Home / 青春 / 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 / 第1部 一章【財前姉妹】その6 第二話 麻雀の申し子

Share

第1部 一章【財前姉妹】その6 第二話 麻雀の申し子

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-04-20 10:00:00

63.

第二話 麻雀の申し子

「……ツモ」

三四赤伍六六23(西西西)(中中中)1ツモ

「1000.2000」

 最後の局。手を開けたのはユウだった。感動で震えながら倒牌する。

「記念すべき第1回UUCコーヒー杯優勝は一般参加の佐藤ユウさん! おめでとうございます!!」

優勝はユウ

準優勝は富士山

3位は杜若

4位は猿山という結果で大会は終了した。

「実力派プロを差し置いて10代美少女の優勝! 参加者の中でも最年少の優勝だ! これは話題になるぞ!」と湧いている人達もいれば「猿山プロお疲れ様でした」「富士山プロおしかったのに!」「杜若プロあと一歩でしたね!」とプロ達に駆け寄る人達もいた。

(夢みたい、私が優勝なんて。いや、これからだった。夢実現のための第一歩がいま達成されたんだ)

『勝利者インタビューしていいですか? 何かあればひとことでいいので』

 ユウはマイクを受け取って、少し話すことを考えた。

『あのっ! あのっ! 私。大会とか、身内でやったことしかなくて…… 雀荘に来たのもこの大会の予選が初めてだったし…… でも、練習は毎日してて! ほんとに麻雀好きなんで…… この面白いゲームを1人でも多くの人に共有してもらいたいなって思ってて、いつか麻雀を教える人になりたいんです。そのために、資格とかより説得力ある実績が欲しいなと思って参加したので最高の成果を出せたこと、とても嬉しいです……! 次回も参加して連覇を狙います。ありがとうございました!』

パチパチパチパチパチパチパチパチ!

 

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第十四話 みんなで来た最高峰の舞台

    231.第十四話 みんなで来た最高峰の舞台南3局 白山シオリの親番 この局のシオリの捨て牌は特殊だった。おそらくはチートイツ狙い。もしやのチャンタや四暗刻も可能性はあるが、まあ確率的に考えて本線はチートイツと読んで良いだろう。 麻雀とは不思議なもので、チートイツとチャンタと四暗刻はそれぞれ全く違う手役であるのに捨て牌は似たような傾向になる。 そんな局の7巡目。カオリの手が整ってくる。カオリ手牌伍六④⑤⑥⑧⑧2345北北 6ツモ ドラ6『おっと、財前カオリ! いい所を引いてきた!』『北を外せばメンタンピン三色ドラ1のハネマンへ進みますね』しかし……(私たちはみんなの知恵を借りてここまで来た! そうだよね、杏奈)カオリ打⑧『おっとこれは?』『なんでしょう…… ⑧筒を先に外して好牌先打(こうはいせんだ)でしょうか?』 いや、そうではない。◆◇◆◇同時刻水戸―― アンは喫茶店仕事の休憩時間に名人戦のLIVEを観ていた。「あっ!! ⑧筒切り! ……これは、私の麻雀だ。ここから⑧筒外しは私の『いい待ちヘッド作戦』だ。親がチートイツやってるから」(……さっきはさっきでミサトさんがユウさんみたいなミスリードする麻雀を披露するし。カオリさんもミサトさんも私

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第十三話 私の中の佐藤ユウ

    230.第十三話 私の中の佐藤ユウ南2局 井川ミサトの最後の親番 ミサトには非常に期待値の高い手が入っていた。そんな6巡目。ミサト手牌 切り番三三三四七②③④④⑥⑦234 ドラ7 場にはピンズの上がポロポロ出ており⑤-⑧あたりはサクッと引いてこれそうだった。 七切りすれば全箇所で受け入れ豊富なイーシャンテンだ。しかし。ミサト打④『んんんんん??』『井川、これは不思議な選択をしました。何のために七を残したのでしょうか?』『ちょっと、わかりませんね。たしかにこの手に①を引いてしまうと勿体ないとは思いますが……』(解説者さんたちは困惑してるとこじゃないかな。この、ユウがやりそうな選択は。私の中の佐藤ユウがここは七萬を囮に残せと言っているの!)3巡後ミサトツモ⑧『張った! 勝負手』「リーチ」打七 スパッと美しく牌を横に曲げる。その所作一つとってもフリーに通い始めの頃のミサトとはまるで違う。林アヤノを見て習ったプロの所作。井川ミサトもカオリ同様に凄まじく成長していた。同巡カオリ手牌二三四伍六七八④⑤7788 7ツモ ドラ7『あっ! 財前カオリもテンパイしました!』『いやでもこれは、二切りになってしまいますよ!』『もしかして…… いや、間違いない。待ちの反対側となる上の牌を囮として引っ張ることで本命を上だと思わせ

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第十二話 プロの対応

    229.第十二話 プロの対応 最終戦南入。勝負は後半戦に突入した。親は左田ジュンコ。 左田は親番だからリーチして攻めたいのと最後の親番をなんとかして維持するために鳴きたいのとで考えが決まらず揺れていた。(メンゼンで行くなら役牌はいらない。でも、仕掛けて行く方針も捨てがたい…… どうする) タンヤオもピンフもつかなくする三元牌の存在は扱いの難しい問題だった。「…すいません…」 ジュンコが第一打から長考する。そんなことは普段ならまずない。決勝戦のプレッシャーがジュンコに大きくのしかかっているのは誰の目にも明らかだった。(ジュンコさんのこんなに長考するとこ初めて見た)《親番のジュンコにとってはここが天下分け目ですからね》ジュンコ1巡目打発 この、ごく普通の切り出しに15秒ほどかけた。その事実が(この局はリーチで攻める。先制リーチの為に目一杯まで広く受けて鳴かれそうな牌はスタートから処分していく!)と宣言しており、危険信号だった。 それを見た白山シオリが(その対応はさすが!)としか言いようのない反応を見せた。「(四)チー」「ロン。1300」白山手牌二三②②②⑧⑧中中中(二三四チー) 一ロン 四萬の方を鳴いてタンヤオに見せかけての一萬をロン。しかも、鳴かなければ四暗刻イーシャンテンの手からの仕掛けである。(くっ! 確信してる鳴きだ。ここで私が決定打を作ろうとしてることを……。や

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第十一話 ウルトラCの麻雀

    228.第十一話 ウルトラCの麻雀 シオリとジュンコはここで(絶対にこの最終戦だけはノーミスで打つ!)という心構えでいた。それは立派だったが、カオリとミサトの心構えはそれ以上だった。(最後の半荘だ。絶対に満点を…… いえ、それ以上のウルトラCの麻雀をしてみせる! 今日、いまここで自己最高記録の更新を! いま、自分の枠をブチ破ってやる!!) さながらオリンピック本番で自己新記録を出すつもりのアスリートのようである。 この考え方こそが佐藤スグル直伝のものだ。細かいところは教えてくれないスグルだが、強く生きるとは、勝つとは、それがどういうことか。そんなような話はよくしてくれた。 かつて麻雀部で佐藤スグルはこう教えてくれた――「いいか、そつなく打つな。小さくきれいにまとまろうとすんな。多少危険だろうと構わない。もとより安全と勝利は両立しないものだ。 上手くなくていい。ただ挑戦者であれ! いつだって満点以上を出すつもりで戦いに挑むんだ。そうした時にやっと初めて満点が出るんだよ。ミスしないぞという心構えじゃ80点の正解が限界だからな。120点取るつもりでいて初めて100点が目指せるってこと忘れないこと!」「「はい!」」「力強くあれ! おれたちはチャレンジャーだ! 昨日までは出来なかったことであっても諦めたらいけない! 今日は出来るかもしれないと思って挑むんだよ!」────── この心の持ちようがカオリたち麻雀部の強さなのだった。そして今その心構えの効果が結果に出た。「リーチ」 白山シオリの先制リーチだ。そこに対してカオリは安全牌を持っている。しかし……

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第十話 最高打点になる手順

    227.第十話 最高打点になる手順 池袋―― 雀荘『ペガサス』にて「ナオさん、何見てるんすか?」 財前マナミの実の姉である石井奈央(いしいなお)はパソコンで師団名人戦を観戦していた。「師団名人戦決勝」「へえ、競技麻雀も興味あるんすね」「私の義理の妹がいま決勝戦に残ってるからね」「ええっ!?」「この子。財前香織」「めっちゃ美少女!」「そうなのよ。ちなみに血の繋がった妹もいるけどそっちも美少女プロ雀士よ」「でも、財前って? リングネームみたいなもんすか?」「いや、本当は私も財前なの。親が再婚したからね。でも、そのタイミングで私は自立して家を出てってたから面倒くさいし旧姓の石井をそのまま名乗ってるだけ。いま親の姓は財前なのよ」「えっ、そうなんだ」「私は財前にはならなくていいわ。それよりも、早く私を『泉』にしてよね、テンマくん!」「も、もーちょっとお金が溜まったらね……」「たくう、頼りないんだから!」◆◇◆◇ 水戸―― 雀荘『ひよこ』にて「店長、店長! 最終戦ですよ!」「おお! どうだ、カオリさんは勝てそうか?」「総合ラス目だけど優勝の目はあります。それに、なんだか楽しそう!  あの子はきっとやってくれる。諦めてないどころか、ここから逆転するストーリーを考えて楽しんでる。そんな顔してますね」「なら、きっと勝つ

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その16 第九話 絆読み

    226.第九話 絆読み ──最終戦 井川ミサトはジッと財前カオリを見つめて昔のことを思い出していた。(カオリ…… 私の大好きな友達。高校2年の頃は麻雀部で1番弱かった子が…… それが今はすっかり強くなってプロ意識も高い。しまいには麻雀界最強を決める大会の決勝戦に残って私の敵として立ちはだかるのだからわからないものね、カオリも私も)「リーチ!」 そんなことを考えていたらカオリから4巡目にリーチが入った。ミサトの手はとても勝負などできるものではなかったので徹底して降りたが…… 15巡目、ついに安全牌を失ってしまう。 選択肢は2つだけ。孤立した1索切りか孤立した三萬切り。他の牌は5枚使いスジや宣言牌跨ぎの3枚使い、ドラ周辺牌などでとてもじゃないが切り出せない。1が当たりのケース1.1単騎2.1シャンポン3.1-4リャンメン(あるいはノベタン)この3つのケースであり、それと比較して三は三が当たりのケース1.三単騎2.三シャンポン3.三-六リャンメン(あるいはノベタン)4.三ペンチャン5.三カンチャンこの5つのケースがある。つまり数字の理論上は1索の方が通るように思えるが…… それは間違いだ。(果たしてプロ意識を持っているあのカオリが4巡目リーチで愚形三萬待ちなどするだろうか? ましてこれは映像対局だ…… あの子なら……)

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status